水戸2-3大宮
1.6ptゲーム
ご安全に。
久々に試合全体を振り返ろうかなと思います。別記事も書ければなと目論んでいるので、簡潔に纏めていきたいと思います。
何が何でも勝たなきゃならん試合に勝利することが出来ました。これで水戸とは6pt差。当然直接対決はもう無い訳で、大宮にとっては非常に大きい勝利。
水戸側からすると、前半の出来を考えれば非常にショッキングだったと思います。
正直、前半で2点差というのはかなり厳しいかなと思いましたが、このチームもだいぶ強くなりました。それくらいで折れるメンタルではなかったということです。
それにしたって前半と後半で別チームが戦っているみたな内容の今節。その辺をポイントに置いて振り返ってみたいと思います。
2.前半
まずスカッドと嚙み合わせですが以下の通り。
水戸の特徴としては、やはり綺麗な4-4ブロックを作っての守備とプレッシング、そこからのカウンターという所でしょうが、一方でボールを持てば2-3-5の様な形で可変して攻撃をしかけてきます。
特に2列目の3は流動的で、2SB+1DHだったり、2DH+1SBだったり。3の両端は若干内に絞ってWG役の選手へのパスコースを作るような動きをよくしていたと思います。
水戸の前線5枚と大宮の後ろ5枚。特に大宮のWB周辺、つまり大外のレーンですね。この辺がどう噛み合うのかが試合を左右するポイントになるかなと思ってみてましたが、まぁ見事にそこが左右する展開になりました。
大宮の狙いはいつもと変わらず以下の通り。これは後半も共通、試合全体での狙いと考えて貰って問題ないと思います。
【大宮の狙い】
- 敵陣では5-2-3、自陣では5-4-1、そこからサイドに誘導してボールを奪う。
- 5-4-1の場合は中央を固める。
- 奪ったら時間をかけずに裏のスペースを活用
- 或いはシモビッチを起点とした攻撃
特に狙いは変わらない、この1年でベースは作り上げました。
しかし、対する水戸もこの試合の重要性を十分理解しています。しっかりと、対策を講じてきます。
【水戸の対策】
- ロングボール戦術
- ボールサイドでの圧縮
まず、水戸ボールの時。
前から奪いにくるならボールを投げちゃえば良いという事で、DFラインから一気に前線に送り込むことで大宮のプレスを回避しつつ、敵陣に侵入します。
と、同時に放る先はサイドが中心だったかと思います。これをする事で、大宮のWB陣を押し込める事に成功。
大宮としても、もしWBが前に奪いに行った状態でロングボールを放られたら、水戸の前線5枚に大宮は後ろ4枚で対峙しなければならなくなる、所謂数的不利=ピンチに陥ってしまうのでそれは許容出来ないと。
同時に水戸は、2列目と最終ラインでシモヴィッチを囲ってしまう。つまり、大宮のカウンターの起点を先に潰してしまう。しっかりとカウンター対策を取った上で、ロングボール戦術を採用してきたという事です。
この戦術を取られてしまっては大宮は全体を押し上げ難い。更に水戸2列目の両端は若干絞ってくるという事で、WBの前のスペース、即ち大宮が刈り取り場に設定している所が空きがちになる。結果、奪いに行きたいポイントまでの出足が遅れ、水戸ボール時に「時間とスペース」を与えてしまう。
これが、自陣でやりたいようにやられてしまった背景のポイントの1つだと思います。
とはいえ、ボールを持てる時間帯もありました。この時はどうだったでしょう。
水戸は綺麗な守備ブロック形成しつつ、ボールサイドに圧力をかけてきます。ゾーンディフェンスの正統派とも言うべきでしょうか。逆サイドは完全に捨てていたように思います。
一方、大宮の攻撃はWBが幅を取りながらピッチ全体を使う。目的は相手のブロックを広げるためですね。これも攻撃の仕方としては正統派だと思います。
ただ、ボール周辺のエリアに限定して見れば、水戸は人数をかけて守れる=奪回しやすいという訳です。奪ってしまえばWBの裏を中心にスペースに放り込んで陣地回復。
大宮としてはボールを前進させる際の「ゆとり」みたいなものが足りてなかった、厳密に言えば持てなかったのかもしれません。
折角ピッチ全体を使おうと配置させているのであれば、もう少し揺さぶってみて水戸の守備を広げ、縦パス等で進入したかった所ですが、後ろで持ってれば奪いに来るし、前進すればそこは出口の見えない密集。落ち着いてボールを動かすことが出来ませんでした。
因みにメキシコさん、この展開を予言していたようです。
怖いのは、WBが敵SBに止められた時。こうなると大宮はアグレッシブな守備が出来なくなる傾向がある。この状態が続いてタコ殴り、結果水戸の時間帯が多くなるみたいな事は可能性としてありそう。#ardija pic.twitter.com/PYFBdSdXVY
— Mexicorange (@mexicorange) 2019年10月6日
という訳で前半は水戸の策がハマり、水戸のペースでゲームを支配される形となりました。絶望の淵に立たされた大宮は、後半どう修正するのでしょうか。
3.後半
厳密に言えば前半30分前後から、大宮は布陣を4-4-2に変更してきます。それに加えて、後半入りからシモヴィッチ⇒フアンマ、小島⇒石川にメンバーを入れ替え。すると早速、巻き返しを図ります。
そもそも、4-4-2への変更の意図は何だったのでしょう。これを知れば、後半別チームになった理由が大方理解出来るのではないかと思います。
「大宮の狙い」として作図したものと比較してみると良いと思います。通常時は後ろを5枚にして所謂5レーン(参照)をまず埋め、そこから前線がボールをサイドに誘導し刈り取る。WBが前に出た時、そのスペースはDFラインがスライドさせて埋めるという形を取ります。
(因みに、この時疑似的に4-4-2だったり4-3-3の形になるので、「5-2-3⇒4-3-3可変」みたいな風に言ってるのでご参考まで)
【大宮の守備のポイント(プレスする場合)】
- 前線五角形の誘導の仕方(例えばコースを切りながら追い込めるか、等)
-
WBが勇気をもって前に出てこれるか。
-
DFラインがしっかりとスライド出来るか。
【大宮の守備のポイント(引いた場合)】
- 5-4-1で中央を制限する。
- そこからサイドに誘導、シャドーとWBで挟み込んで刈り取る。
他のレビュアーも同様の事を述べていますが、特に大宮の攻守全体について理解するには、あるちゅー氏のブログを是非見て頂きたいなと思います。
話を戻して、この試合前半を思い出しましょう。
【前半の大宮】
- 大宮のWBは水戸のロングボール攻撃によって完全に押し込まれていた。
- 下手に前に出れば、DFラインのスライドが間に合わない内にWB裏のスペースを活用されピンチ。WB前に出にくい。
- 出なきゃ出ないで、WBの前のエリアで時間とスペースを与えてしまう。
という事でした。
ならば、疑似的に可変させていたものを強制的に矯正してしまう。4-4-2に矯正し、初めから奪いたい位置に人を配置、水戸から時間もスペースも奪ってしまいましょう。この布陣の変更はそういう意図があったように思います。
更にカウンターの起点を増やすという事も考えていたと思います。以下図を参照下さい。
前線に2枚置くことでボールを回収しやすくしつつ、個々で見れば、ドリブルで打開できる奥抜、サイドに流れてスペースを作ったり、そこで受けて起点となる事が出来るフアンマ。
フアンマのスタイルを考えると、後半早々からの交代は非常に効果的だったと思います。
また、カウンターをするにはボールを奪わなければなりませんが大宮の守備はシンプルになりました。
4-4でブロックを形成しなが中央は塞ぎ、ロングボールを展開されれば横にスライドして圧縮。サイドからの展開を試みようとすれば、先ほど述べた通りそこには既にSHが待ち構えている。
奪ってなんぼのこのチームです。前半に比べて、奪えるポイントが各段に増えたと思います。そこで効いてくるのが石川です。彼はFootball Labに於けるチーム内ボール奪取ポイント一位。
https://www.football-lab.jp/omiy/
大宮は石川・三門のボール奪い隊を中心に積極的にボールへアプローチ。人数が多いので前半より回収が容易になります。
そして、奪ったら間髪入れずに同サイドでカウンターを仕掛けるという構図でした。
仮にカウンターが失敗した場合でも、少なくとも陣地回復、つまり敵陣でプレーする事は可能となります。
また1点目の起点となったのは、この様に後方からペナ角目掛けたロングボールです。
密集を作って圧を掛けてくるならば、それに付き合わず前線目掛けてキック&ラッシュ!まるでラグビーのパントキックの様に、こちらも一気に陣地を回復することが出来ます。
この様に後半は、
- 奪ってから早く攻撃に出たい
- 相手の陣地でプレーしたい
という狙いを、システム変更によって存分に出すことが出来ました。もっと言えば、水戸が前半やっていたことをそっくりそのまま、1.5倍返ししたとも言えるかもしれません。
余計な事はしないで、お互いロングボールとカウンターで殴り合う。
最終的にはそんな試合内容で幕を閉じた35節でしたが、高木監督の矯正力と、選手のメンタリティの成長を感じる、非常に特別な試合にもなったかなと思います。
因みに、後半も若干予言出来てました。今度からプレビューやろうかな。
なので、出来れば敵SBを押し込めたい。或いはSBの開けたスペースを上手く利用して、上がりにくい状況を作る。ポイントはその辺だろうかね。#ardija
— Mexicorange (@mexicorange) 2019年10月6日
4.奪って〇秒で即ゴール
この見出しに対しては深く突っ込みませんが、少し余談です。実は先日初めて練習の見学に行ってきました。時期は長崎戦の前の水曜日ですね。
細かいことは企業秘密として、高木監督が頻りに言っていたのは、
良い状態になったら早く攻めよう
という事でした。色々な注文はしていましたけど、ベースはこの一言に集約されると思います。
実際、長崎戦では良いショートカウンターも決まりましたし、3点目も自陣から回収してのゴールでした。
これはその前の節のヴェルディ戦、奪って良い形を作るものの、上手く攻めきれなかったことの反省から来ているものだと思います。
じゃあ実際の所、奪ってからどれくらいでゴール決めてんだ?というのが気になったので、ちょっと調べてみました。
とりあえず、長崎戦以降の6ゴール、この内PKを除いたゴールについて、マイボールになってからゴールするまでの秒数をカウントし、平均を出してみました。その結果、
約8秒
でした。奪って8秒で即ゴールです。因みにバモスに載っていたのは、シュートまでの平均時間が13秒とかだったと思います。13秒も早いですが、ここ数試合のゴールに限って言えばもっと早くなっている。
因みに、水戸戦だけに関して言えば7秒、町田戦まで遡ると9秒です(平均)。
このデータだけ見ると、大宮がこの先も勝ち続けていく為に最も重要なことは、時間を掛けずに決定機に持ち込む事。そして、そのカギとなるのはボールを回収してカウンターに繋げるシーンを多く作れるかという点だと思います。
その為に、「どう奪うか」といことは常に考えて置かなければいけません。
この辺のデータを足掛かりにして、別途記事を纏めようと思いますが、すぐに攻撃に切り替えられるかという点に注目して試合を観るのも面白いかもしれません。
皆さんも少し気にして見て頂ければと思います。
5.おわりに
いよいよ残り8節の所まで来ました。
柏が負けたお陰で、直接対決を残しながら6pt差にまで詰めることが出来ています。因みに柏の次の相手は水戸。なんとオルンガ不在。
にも拘わらず、今週は台風で延期になる可能性が高いという不運が待ってそうですが、月曜(祝)くらいに順延してくれれば、なんら問題ないでしょう。Jリーグ公式さん、頼みます。11月に順延とかはやめて下さい。
さて、大宮は5戦負けなしの3連勝。夏場に躓きましたが、ここにきてまた調子を上げてきましたし、今は選手達のコンディションも良好に見えます。怪我人も大方戻ってきました(一部また怪我してそうですが・・・)。
次節福岡戦、今年はあまり調子の良くない福岡ですが、前回対戦ではドローに持ち込まれて痛い目にあっています。しっかりと借りを返しましょう。
最後の最後までこの団子状態は続くと思います。ですが、少しでも抜け出すべく一戦一戦大事に、そして最大限のサポートで後押し出来ればと思います。
次も勝ちましょう。
以上
※宣伝
大宮アルディージャ大好きな人たちの集い「大宮戦術談議会」という会を開いてます。上記がメンバーのブログです。戦術談議会と言っても結局楽しい飲み会です。大宮で語らいたい人。一人で見に来てて仲間が欲しい人。老若男女問いません。興味あるかたはお声がけ下さい。